母ちゃんが教える『何とかなるよ』 nantokanaruyo.com

幸せな生き方、教えたるよ。あなたが辛い時、寂しい時、迷った時、一人で乗り越えていけるように。頑張れるように。相手を思いやれる優しい人になってくれるように。間違わんと生きていってくれるように。あなたの心に、きっと届くように。

母ちゃんが教える12『経験に勝るものはない ①』

母ちゃんです。

 

 

命に関わるような怖いことがあった時、

誰も頼る人がおらんくて辛い時、 

あなたが、誰にも助けてもらえやんと苦しん

どったら、一人でなんともならん困難にぶち

当たっとったとしたら、

母ちゃんの経験が役にたつやろか。

  

ちょっと長くなるでな。

 

 

母ちゃん、大人になった今でも、海行くとテ

ンションあがる。

潮の匂いがすると子供の頃のこと思い出す。

 

 

母ちゃんは子供の頃、夏休みと冬休みは、

じいちゃんとばあちゃんの家に預けられとっ

た。

その頃はまだ家族があったでな。

 

じいちゃんちは漁師町で、すぐ目の前に海が

あったから、夏休みは毎日のように泳いどっ

た。

お盆がくるまで。

ばあちゃんが、「盆過ぎて海に入ると、死ん

だ人に連れていかれるで泳いだらあかん」っ

てゆうとったでな。

 

確かに盆過ぎて泳いどるんは、見たことない

よそから来とる人が少しだけやった。

お盆がきたら、それからは海に入らんと、そ

れでも毎日海を見にいっとったな。

 

大人の人らはみんな忙しかったから、いつも

一人で泳いどった。

晴れの日も雨の日も台風の日も、朝から日が

沈むまで泳いどった。

 

そのおかげで母ちゃんはな、

生きてくうえで大切なことを、海から教えて

もろた思とるよ。

 

潮の流れは毎日違ってな、海面の高さも毎日

違う。

見えとる海の様子も、潜って見る海の様子

も、毎日違うんよ。

 

母ちゃんが、何で日々の海面の高さの違いが

分かったかというとな、母ちゃんが泳いどっ

た海には岩場があって、ばあちゃん家からは

きれいに海が見渡せる。

毎朝起きると、母ちゃんが目安としとった岩

がどこらへんまで海につかっとるかで、今日

は深いか浅いか、その頃は潮の満ち引きとか

は知らんだでな、今日は深いな、浅いなって

見とったんよ。

 

波も毎日違ってな。

波打ち際のザザーンとする波も、高い日も低

い日もあってな。

不思議なことに、時々沖のほうで、その波打

ち際にあるはずのザザーンの波があることが

あったんよ。

 

その沖に波がある日はな、泳いだらあかん。

見えやん海の中は、潮の流れが読めへんくら

い速くて複雑になっとる日やからな。

 

 

母ちゃん忘れへんのがな、一度だけ、沖で波

がザザーンとなっとる、泳いだらあかん日に

泳いだことや。

 

その日は、いつも目安にしとる岩は潮が満ち

とるようには見えやんだし、波打ち際の波は

低かったし、その沖に波がある意味が分

からんくて、いつものように泳いだんや。

 

母ちゃんは、いつも通り沖まで泳いで、そろ

そろ疲れたから砂浜に戻ろうと、方向変えて

砂浜向かって泳ぎだした。

母ちゃんは浮き輪なんかなくても泳げたし、

毎日泳いどったから泳ぎには自信があった。

 

それでもその日はなぜか、泳いでも泳いでも

進まへん。泳いでも泳いでも砂浜に戻れへ

ん。

母ちゃん焦ってな、どういうことやと一生懸

命考えた。

それでも、考えながらでも泳ぎ続けやな、沖

に流されてくと思ったから、泳ぎながら焦る

気持ちを抑えて、潮の流れを見た。

それでも、相当深い海の中に浮いとる母ちゃ

んは、その時は潮の流れがよく分からんだ。

それでもこのままおったら死んでしまう。

一生懸命考えた。

ない頭で一生懸命考えた母ちゃんは、思いつ

いたんや。

 

前に進まんのやったら、横に泳いでいこう。

正解やった。

横には泳ぎ進めた。

泳いで泳いで何となくこれは感覚やったと思

うけど、あるところからは流れが変わったよ

うに感じて、そこまでいったら、あとは砂浜

に向かってあっという間に泳ぎ着いた。

 

砂浜に上がったら、ものすごい疲労感と、

さっきあのまま帰れやんかったらと、その恐

怖が込み上げてきて、母ちゃんそのまま砂浜

にしばらく寝転んだ。

すっごい疲れとったんや。

 

 

母ちゃんが助かったのは運が良かったわけじ

ゃない。

誰も助けがなくて、一人で何とかしやなあか

んと思ったとき、

その状況に絶望せんかったこと、生きること

を諦めなかったこと、やみくもに泳いで力尽

きるんじゃなく、どうすれば助かるか一生懸

命冷静になろうとしたこと、まわりの状況を

分からないなりに見ようとしたこと、

毎日のようにこの海で泳いでいたから、海の

感覚を体が知らぬ間に覚えていたこと、

それやったと思う。

 

 

それからは大好きな海で、それを超えるよう

な怖い体験はあまりなかった。

あったことといえば、遠くの沖まで泳いで泳

ぎ疲れて戻る元気がなかった日に、しばらく

海で仰向けに浮いて、体力が回復してから砂

浜まで泳ぎ帰ったことと、台風の日もどうし

ても泳ぎたくて海に入ったら、波に巻かれて

岩に頭を打ちつけたことと、もう一度海に戻

ったら今度も岩にぶつかって、親指の両爪が

ベロンとはがれてしまったことぐらいやな。

 

その二つは、沖にザザーンの波があったあの

日とは、比べものにならんぐらい母ちゃんの

中では大したことなかったけど、

海では、沖に進むのと同じだけの、帰るため

の体力を残しておかなあかんこと、疲れたら

浮いとったらええこと、

台風の日は泳いだらあかんこと、台風のよう

なすごく波が高いときは、意外と潜ってしま

うと体を波にもってかれやんこと、いろんな

ことを覚えた。

 

母ちゃんがラッキーやったことは、大人がお

らんかったことと、誰も海の怖さを教えてく

れる人がおらんかったことや。

 

海は怖い。

怖いけどおもしろい。

 

 

大人になった母ちゃんは、

海の怖さと面白さを、毎年夏が来る度に、

我が子に話す。

 

その経験が、今の母ちゃんを作ったことも。

 

子供には怖い思いさせんと、海の怖さと面白

さを教えてやりたい。

 

それから、

あんたには、母ちゃんがおるでな。

そう言っている。

 

 

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