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母ちゃんが教える『何とかなるよ』 nantokanaruyo.com

幸せな生き方、教えたるよ。あなたが辛い時、寂しい時、迷った時、一人で乗り越えていけるように。頑張れるように。相手を思いやれる優しい人になってくれるように。間違わんと生きていってくれるように。あなたの心に、きっと届くように。

母ちゃんが教える19『母ちゃんの夢 ① 人の許し方 』

必読・母ちゃんの経験や伝えたい話

 

 

 

母ちゃんです。

 

 

 

母ちゃんには、人にあんまり言いたくない過去がある。

 

 

母ちゃんが物心ついたときには、母親と呼べ

る人はおらんかった。

 

母親は、若くして子供を生んで、母ちゃんが

三歳の頃に離婚したらしい。

父親も母親も若かったから、うまくいかんか

ったんやろう。

父親は、母親から母ちゃんを奪って、そして

離婚した。

普通は母親が子供を連れていくもんやろけ

ど、父親の性格を知っとる母ちゃんには、父

親がそれを許さんかったことは想像できる。

 

そして、母親はもう生きてない。

 

 

母ちゃんは、小学生の時には、ほとんどの家

事をこなせていた。

買い物から家計簿から、ご飯作って洗い物し

て、掃除して洗濯して、いつも寝れるのは三

時間ぐらいやった。

 

何であんまり寝れやんだかというと、家事だ

けじゃなく、勉強もスポーツも友達との交換

日記も、母ちゃんにはやることがいっぱいあ

った。

家事終わってから走りに行って、帰ったら勉

強した。こんなんは、努力したら結果がつい

てくるんやから、結果が望めることは努力し

て当たり前やと、そう思っていた。

 

ちなみに、友達との交換日記は、子供の頃か

ら大人と変わらんかった母ちゃんにとって、

面白いけど眠くて、ちょっと大変やった。

友達の番の時に、「好きな犬の種類を書い

て」とあったので、「何でそんなん書くんや

ろ、あ~眠~犬なんて何でもええって」と思

いながらも、「秋田犬」と書いた。

ただ寝ぼけていたらしい。

次の日渡したら大笑いされた。

秋田県」と書いてあった。

 

 

 

父親は、学歴がなかったから、随分苦労しと

ったと思う。

毎日洗う父親の作業着は、油でいつも汚れと

った。

危険が伴う体力仕事をしていると本人は言っ

ていたが、母ちゃんにはそれがどんな仕事な

んかは、よく分からんかった。

自分で会社をおこしたので、今の仕事が終わ

る頃になると、一生懸命色んな所に電話をし

ては、たった3人の従業員のため、生活のた

め、仕事をお願いしとった。

 

その姿は子供ながらに、何とも表せやん、何

かこう悲しくなるような、感じるものがあっ

た。

 

 

父親は、お酒と女と暴力と、典型的な弱い人

やった。

すごく繊細な人やった。

 

自分の機嫌が悪いときは、母ちゃんを殴った

り蹴ったりするので、母ちゃんはいつも父親

の暴力と、父親が帰ってきて鍵を開ける音に

怯え続けた。

 

学校は楽しかったけど、家は、帰りたくなかった。

血が出とることもアザがあることもしょっち

ゅうやったけど、それを知っとる近所の人

も、親戚の人も学校の先生達も、誰も助けて

くれやんかった。なんか腫れ物をさわるみた

いに接してきとったから、あれは可哀想やと

思ってくれとったんか、それは分からん。

 

友達にはいつも、転んだと笑って言っとっ

た。

友達はいつも、ドジやな~と笑った。

 

 

親戚の人はのちに、父親と合わんだんやろ

う、付き合いがなくなった。

じいちゃんとばあちゃんにもその時から会っ

てない。

 

 

父親は、暴力だけでなく、精神的にも母ちゃ

んをいじめぬいた。

やっと貯めた少ないおこづかいで買ったオモ

チャは、帰ってくるなりすぐ、生ゴミバケツ

に捨てろと言われた。

その日も父親は、機嫌が悪かった。

父親は、必ずそれを、母ちゃんに捨てさせ

た。

それは、一年かけてやっと貯めて買った、ま

だ開封してないオモチャやった。

 

分身のように大事にしとったぬいぐるみも、

何か気に入らんことがあって母ちゃんをボコ

ボコにした後、ゴミ置き場に捨ててこいと言

った。

もちろん母ちゃんが自分で捨てにいった。

拾うことは殴られることを意味した。

 

それから母ちゃんは、ぬいぐるみを買わんく

なった。オモチャも買わんくなった。

少ないお金は、早く家を出るために貯め続け

た。

作った料理も、気に入らんと捨てられた。

昼寝はしたらあかんという、意味の分からん

ことを言われていたので、子供の頃に昼寝を

した覚えはない。

泳ぎが下手なんちゃうかと難癖をつけられ

て、お風呂に何度も顔をつけられたこともあ

る。死ぬかと思った。

何が気に入らんかったんか、仕事に行く前に

「お前、今日殴るぞ」と言って出かけて、一

日中怯えて過ごしたことも何度もある。

もちろん帰ったらボコボコにされた。

 

運動会は一度も来てもらえやんかった。

母ちゃんは、自分で作ったお弁当を、いつも

理科室で食べた。

そのあと二年ほど、継母と呼ばれる人がおっ

たけど、これはもう言わんとく。

 

母ちゃんは、体も心もボロボロやった。

その頃は、昼は継母から、夜は父親から、休

みの日は地獄やった。

 

 

 

父親は子育てをしらんかった。

人を愛する方法を知らんかった。

 

 

 

とにかく、父親に捨てられる高校生の頃ま

で、母ちゃんは父親の前では、一切の感情を

捨てた。

母ちゃんは、色んなこと何もかもが怖かっ

た。

 

 

 父親とは関係ないけど、母ちゃんは母の日と

かいうのが死ぬほど嫌いやった。

その頃幼稚園でも学校でも、母の日になる

と、お母さんへのプレゼントを作らされる。

あげる相手もないのに作るプレゼントは、悲

しくて虚しくて、思い出したくもない。

カーネーションの花は、見るのも嫌気がする

ほど嫌いやった。

その日が近づくとあちこちの店で、「お母さ

んありがとう」のカーネーションが売られ

る。

母ちゃんはそれを見たくなくて、お花コーナ

ーはいつも見やんように歩いた。

大きくなってからは、なんとも思わんくなっ

たけど。

 

テレビで離ればなれになった親子が再会する

シーンなどがあると、泣いてしまうので見や

んようにした。

どうしても見やなあかんときは、思いっきり

「ケッ!」とバカにした。

 

テレビで暴力シーンがあると、怒鳴り込みた

い、助けたい、どうやったらできるか真剣に

怒り狂った。その頃はまだ、それが作り物や

とは知らんかったから。

 

 

 

 

母ちゃんはそのおかげで、人の痛みの分かる

人間になれた。

弱い人や辛い人のためなら、自分の身など惜

しくないほど血が騒いだ。

言葉には人一倍気を付けた。

心ない言葉が、いかに人を傷つけるのか知った。

人の気持ちには人一倍敏感になった。

人の裏表があることを、いろんな大人から覚

えた。

きれいな人間なんてほとんどおらんことも。

 

 

優しいうわべだけの言葉をかけてく

る大人は、死ぬほど嫌いやった。

 

 

父親に捨てられた時、父親は新しい女の人と

新しい家を買って、母ちゃんを捨てた。

新しい女の人には邪魔やったらしい。

 

 

母ちゃんが捨てられたことは、辛かったと思

うやろけど、違う。

その日母ちゃんは、家を出てすぐ「やったー

ーー‼‼」と叫んだ。

これからはもう自由や‼と思った。

 

父親の女の人の趣味は、最悪やった。

 

生活をどうしていこうかとかは頭になかっ

た。とにかく母ちゃんは、あの恐ろしい親か

ら離れることができたことを心から喜んだ。

 

それでもどうしても、父親からの恐怖はいつ

までも母ちゃんを苦しめた。

もうおらんのに、それでも怖かった。

 

 

今は、何とも思ってない。なんやったら感謝

しとる。

 

 

母ちゃんは分かった。

父親は弱い人やったんや。

父親も、辛かったんやろ。

父親はよく泣いた。

勉強がすごくできたのに、家にお金がないと

いう理由で、父親は中卒で働きに出た。

ばあちゃんは、母ちゃんに意地悪やったか

ら、多分ばあちゃんは、父親をきちんと愛せ

やんだんやろう。

父親は、人の愛し方を知らんかった。

父親が悪いんじゃない、ばあちゃんが悪いん

や。

そしたら今度は、ばあちゃんが悪いのは、ば

あちゃんのお母さんが悪いんや。

 

誰も悪くない。

 

 

人なんてそんな弱いもんなんや。

 

 

 

許そうと思って許せたわけじゃない。

母ちゃんは、そんなアホくさいことに縛られ

たくなかった。なんで離れられたのに縛られ

とらなあかんのや。

母ちゃんは、強くなりたかった。

強くなるためには、人の気持ちが分からなあ

かん。

母ちゃんは、父親の気持ちになったただそれ

だけで、あんなに嫌って軽蔑しとった父親

を、心から許せた。

自分が今ここにおるのは、この父親がいるか

らやしな。

 

 

父親の存在があったからこそ、母ちゃんには

他の人にはないいろんなものがある。

 

 

 

 

子供の頃から思い続けた。

 

母ちゃんが母ちゃんになったら、子供をいっ

ぱい愛して、殴ったりなんかしやん。

辛いときはそばにおって、怖いときは守った

る。

おいしいご飯作って、いろんなこと教えたる。

母ちゃんがほしかったもんあげる。

 

 

 

 

母ちゃんがほしかったのは、

お母さんのニオイと、優しい言葉やった。

 

 

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