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母ちゃんが教える『何とかなるよ』 nantokanaruyo.com

幸せな生き方、教えたるよ。あなたが辛い時、寂しい時、迷った時、一人で乗り越えていけるように。頑張れるように。相手を思いやれる優しい人になってくれるように。間違わんと生きていってくれるように。あなたの心に、きっと届くように。

母ちゃんが教える58『老いるということ 金魚』

生き方①

 

 

 

母ちゃんです。

 

 

 

母ちゃんの家には金魚がおる。

 

 

一番最初は、娘が三歳の時に、お祭りの屋台

ですくってきた。

 

最初は6匹おったけど、様々な病気や寿命な

どを経て2匹になり、今はもう1匹だけや。

 

でもこの1匹は、後から来た金魚なので、

最初っからおるわけとちゃう。

 

生き残った2匹の子達は、4匹が様々な病気

で死んでしまったのにも関わらず、白点病・

水カビ病・松かさ病・尾グサレ病など、あら

ゆる病気を乗り越えてきた。

 

生命力にあふれる子達やった。

 

 

金魚は、最初から病気を持っていたらしく、

来て早々、次から次へと色んな病気をした。

 

娘と、図書館に何度も足を運んでは、今のこ

の症状は何の病気なのか、その都度調べては

対策を取った。

 

専用の薬液を買ってきて、飼育水の中に入れ

て様子を見たり、塩水がいいとあればそれを

試したり、後に、父ちゃんと娘で頻繁に水を

替えることで、少しの病気の症状ならそれだ

けで治ったりもした。

 

次から次へと病気になる様子は、本当にかわ

いそうで、白点病は、最初は1個か2個ぐら

いの白い点々が、体にもヒレにもどんどん増

えていった。体が水玉模様みたいになる。

 

水カビ病などは、突然モコッとした白い綿の

ようなものがのっかるように体について、あ

れよあれよと広がっていった。

 

尾グサレ病は、尾がどんどんささくれていっ

てボロボロになっていく。血がにじんでいた

りすることもあって、最初はケンカなどでこ

うなったんかなとか思ったもんや。

 

一番見てられへんだのは、松かさ病やった。

全身のウロコが逆立って、体もパンパンにふ

くらむ。浮きやすくなってしまう。

 

その金魚は、一生懸命に体が浮いては潜り、

浮いては潜りを繰り返した。

 

母ちゃんは毎日毎日その金魚達を見ては、

日々の症状の変化を観察し続けた。

 

病気の子に、他の子がちょっかいをかけてい

る様子があると、「こら!」と、水槽のガラ

スをコンコンとしては、やめなさいなどと合

図したりもしていた。

 

それぞれの子は、病気が治ると今度はまた次

の病気になったりと、最終的に死んでしまっ

たけど、その時にはよく頑張ったなと思える

ほどに、家族みんなが病気の金魚の様子を、

日々心配し続け、あらゆる可能性を試した。

 

 

そして金魚は、最終的に2匹になった。

 

 

その2匹は、和金と呼ばれる種類らしく、色

は薄いオレンジ色で、娘によって名前もつけ

られた。

 

食欲旺盛ですぐに大きくなった子は、

【だいおうくん】

マイペースで穏やかな小さめの子は、

【ちいちさくん】

と、名付けられた。

 

だいおうくんと、ちいちさくんは、その全て

の病気にかかりながらも、どの病気も全て乗

り越えた。

 

泳ぎも早く、母ちゃんの好きな海の魚のよう

なフォルムも好きやった。

 

そして、その後何年間も元気に泳ぎ続けた。

 

だいおうくんは、ちいちさくんの分までもの

すごい勢いでエサを食べるので、ちいちさく

んがこんなんでちゃんと育つんかなとかを、

よく心配した。

 

水替えの時には、父ちゃんが手を出すとあま

り暴れもせずにスッと手に乗る姿は、金魚で

あっても人になつくんやなと、母ちゃんを驚

かせた。

 

ただ一度母ちゃんが水替えをした時には嫌が

ったので、やっぱり2匹は、父ちゃんの手を

覚えとるんやなと確信した。

 

母ちゃんは魚に詳しいんやけど、魚は本来、

人間の手の温度は体に障る。

 

本当は、手はあんまり触れんほうがええな。

 

 

そして、新しくきれいな水に替えたあとは、

金魚達は、本当に嬉しそうに泳ぎ回った。

 

金魚達はもしかしたら、父ちゃんの手に乗っ

たら、きれいな水になるんやと覚えとったん

もしれやん。

 

そのまま何年かして、また娘が金魚を増やし

てもいいかと言ってきた。

 

我が家には他にも、オカヤドカリがおって、

基本は娘が世話をせなあかん。

 

それでも大人もそれぞれに、母ちゃんはオカ

ヤドカリの補助を担当、父ちゃんは金魚の補

助を担当していた。

 

それなら、父ちゃんの了解を取らなあかん。

母ちゃんは、そのルールは必ず守らせてい

た。それは、一緒にお世話をしてくれる人

を立てなあかんということやでな。

 

父ちゃんの了解が出て新しい子が来ると、

やはりその子も病気をもっとってな。

 

ちゃんと薬浴をさせてから入れなあかんかっ

たんやな。

 

でもどこかで、この2匹の生命力ならどんな

病気も乗り越えていけるんちゃうかという期

待もしとった。

 

そして、あらゆる手を尽くしてはみたが、

力及ばず、ちいちさくんは死んでしまった。

 

残ったのは、だいおうくんと新入りの2匹だ

けになった。

 

ちいちさくんは、あらゆる病気を乗り越えて

くれたことや、長く生きて元気に泳ぐ姿をい

つも見とったでな、死んでしまった時には、

自分達を責めたな。

 

金魚達がどこまで思うんかは分からんけど、

ずっとだいおうくんと、ちいちさくんの2匹

で過ごしてきたんや。

 

ちいちさくんがおらんくなったら、だいおう

くんが寂しがるんじゃないかと心配した。

 

これについては、最後まで分からんままや。

 

 

また2匹の生活が始まった。

 

新入りは、琉金という種類で丸っぽいフォル

ムの、名前は【新しい子】となった。

 

この新しい子は、だいおうくんに負けず劣ら

ずの食欲で、とにかくよく食べた。

 

だいおうくんはその頃には、もうすっかり年

をとっていた。

 

目が白く濁り始め、白内障の症状が進んだ。

あまり目が、見えにくくなっていった。

 

あんなに大好きなエサの時間も、エサがよく

見えず、加えて新しい子がものすごい勢いで

ほとんど食べてしまうので、あまり食べられ

ずどんどん痩せていった。

 

だいおうくんだけがエサを食べれるようなあ

げかたを考えようと、アレコレ考えてやって

みるけど、すぐに新しい子にバレては食べら

れてしまうので、家族中でそのことに頭を悩

ませた。

 

 

日に日に老いていくだいおうくんの姿は、胸

にささるものがあった。

 

 

そんな日々の中、母ちゃんは考えていた。

 

 

だいおうくんが若い頃は、いつもみんなの分

のご飯を一人で食べ尽くすほどやった。

 

気も強く、いつも他の金魚を追いかけ回して

は自分の強さを見せつけていた。

 

それが今では、年老いて目も悪くなり、新し

くきた金魚に自分の若い頃を感じ、何と考え

とるやろう。

 

自分の老いを、どう感じとるやろう。

 

 

 

これは、平家物語にある、盛者必衰や。

 

 

この世は無常であり、勢いの盛んな者もつい

には衰え滅びる。

この世は、無常なものなんや。

 

 

 

だからこれは、自然なことなんやろう。

新しい子の時代がきたんやな。

 

そして、自分にそっくりな新しい子の存在を

受け入れやなあかんのやろう。

 

人間は、自分の座が奪われることを怒り狂

う。それが作り物であればあるほどその怒

りは大きい。

 

でも人間以外の生きものは、それを自然なこ

ととして、腹を立てるわけでもなく、それが

当たり前なことと素直に受けいれ、生きとる

んかもしれん。

 

 

だいおうくんはそのうちに、動くことが少な

くなり、水底の砂利を口に加えて出せなくな

ったり、母ちゃんがそれを助けて出してやら

んと自分ではどうにもできないほどに年を取

り、日に日に衰え、ついに死んでしまった。

 

 

気持ちが沈みながらも、いつか自分も訪れる

やろう大切な何かを、母ちゃんは金魚達から

教わった。

 

 

家族みんなが精一杯、金魚達のことを大事に

思ってきたことが、悔いを残さずにすんだ。

 

 

 

今は1匹になった【新しい子】は、今日も元

気に泳いでいる。

 

 

何を思っとるんやろな。

何も思ってへんのかもな。

 

 

 

誰もがいつかは老いる。

 

 

 

 

 

その老いは本来、腹を立てるわけでもなく、

恐れるわけでもなく、自然なことなのかもし

れへん。 

 

 

 

 

 

誰にでも訪れる、誰もが経験する、そんな

当たり前の命の話。

 

 

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